熊本市動植物園の梅園へ|白梅・紅梅と鶯宿梅の物語【2月】
こんにちは、IRISEE22です。
以前から「梅の季節に、家族とゆっくり訪れたい」と心に決めていた場所——それが、熊本市動植物園内にある「石庭式梅園」です。
以前は猫マサくんが「行ってみよう」と連れ出してくれて、桜・菜の花・コスモスの季節に何度か訪れたことがありました。でも梅の時期だけは、なんとなくまだ来られていなくて。今回ようやく、家族でその静かな美しさをはじめてゆっくりと味わうことができました。
2月の梅園 静けさの中に漂う、春の予感
梅園に足を踏み入れると、ひんやりとした空気の中に、ふわりと甘い香りが漂ってきました。

青空に映える白梅。まだ蕾も多く、これからが楽しみな時期でした♪
この日は多くの木がまだ蕾を膨らませている状態でしたが、それでも桜とはまったく違う「寒さの中でひっそりと咲く」梅らしい姿が、そこにはありました。
桜の季節になると人が押し寄せ、にぎやかな雰囲気に包まれますが、梅の時期はどこか静かで、落ち着いた空気が流れています。特別な会話があるわけでもなく、家族と並んでゆっくり歩くだけの時間。今の私には、そんな穏やかなひとときがとても心地よく感じられました。

石庭式梅園の入口。梅の木々が静かに広がる、穏やかな空間です
🌿 梅と桜、何が違うの? 植物豆知識
どちらも日本を代表する春の花ですが、植物としての特徴はかなり異なります。
| 梅(ウメ) | 桜(サクラ) | |
| 開花時期 | 1月〜3月(葉より先) | 3月〜4月(葉と同時か後) |
| 花びら | 丸みがある・枝に直接つく | 先が割れたハート型・枝先に集まる |
| 香り | 甘く強い香りがある | ほぼ無香(品種により異なる) |
| 実 | 梅干し・梅酒など食用になる | 一部品種のみ食用 |
梅は香りで「春の始まり」を告げ、桜は景色で「春の盛り」を彩る。それぞれに役割があるんですね。寒い季節に葉もなく咲いて、香りだけで存在を示す梅の姿には、凛とした美しさがあります。
梅園で出会った紅梅の美しさ
白梅のやわらかな香りに包まれながら歩いていると、鮮やかな赤がふと目に飛び込んできました。白とはまったく異なる、情熱的な色あい——紅梅(こうばい)です。

青空に映えるコウバイの花。その赤さに思わず足が止まりました

木に掲げられた名板。学名も記されていて興味深い
🌺 コウバイ(紅梅)ってどんな花?
園内の名板から、コウバイについて学ぶことができました。
| 学名 | Prunus mume Sieb. et Zucc. cv. Purpurea |
| 分類 | バラ科 サクラ属 〈紅梅〉 |
| 特徴 | ウメの園芸品種・紅梅性。花は通常紅色で、白色の品種でも髄(枝の断面)の部分が紅色になるのが「紅梅性」の証 |
「白い花でも、中が赤ければ紅梅」というのは初めて知りました。植物って、外見だけでは語れないんですね。
白梅の静けさと、紅梅の鮮やかさ。同じ梅でも、こんなに異なる表情を見せてくれるのかと、改めて梅の奥深さを感じました。
「鶯宿梅(おうしゅくばい)」 平安から続く、梅と和歌の物語

園内の掲示板には、この梅園の主役ともいえる「鶯宿梅」の名前にまつわる、美しい物語が紹介されていました。
物語の舞台は、平安時代の宮中
時は平安中期、村上天皇の御世(947〜956年)のこと。宮中の清涼殿に大切に育てられていた梅の木が枯れてしまい、天皇は大変嘆かれました。そこで、紀貫之の娘が大切にしていた庭の梅の木を、代わりに宮中へ移すようにと命じます。
その娘は命に従いながらも、木が運び出される際、枝にそっと一首の和歌を結びつけました。

梅の枝に和歌を結びつける紀内侍と、歌を読む村上天皇——千年前の物語が、絵から伝わってくるようです

🖋 和歌 ― 紀貫之の娘(紀内侍)「勅なれば いともかしこし 鶯の
宿はと問はば いかが答へむ」ちょくなれば いともかしこし うぐいすの / やどはととわば いかがこたえむ
📖 現代語訳 ―帝のご命令とあれば、謹んでこの梅をお渡りいたします。ただ……毎年この木を宿にしていた鶯が春に帰ってきて「私の家はどこ?」と尋ねたなら、私はいったい何と答えればよいのでしょう。
この歌を見た帝は、女性の梅への深い愛着と、鶯(小さな命)への思いやりに深く打たれ、梅の木を彼女のもとへ返したといいます。以来、この梅は「鶯の宿(やど)」=鶯宿梅と呼ばれるようになりました。
📜 出典「大鏡(おおかがみ)」について
この物語は、平安時代後期の歴史物語「大鏡(おおかがみ)」(四鏡のひとつ)に記されています。作者は紀貫之の娘・紀内侍(きのないし)とされており、父の形見ともいえる梅への深い思いが、歌ににじんでいます。
当時、和歌は単なる文学ではなく、感情や意思を伝える「言葉の外交術」でもありました。「返してほしい」とは直接言えない場面で、小さな鶯を介して心情を詠んだこの一首は、村上天皇の心を動かすに十分な力を持っていたのです。
単に「梅が返ってきた」というだけでなく、誰かの「大切に思う気持ち」を、別の誰かが「尊重した」というこの物語。梅の花と一緒にその話に触れることで、胸の奥がじんわりと温かくなりました。
大切に守られてきた梅園への感謝
梅園を歩きながら、手入れの行き届いた樹々や整えられた石庭に自然と目が留まりました。
この石庭式梅園は、平成14年に田口家より梅園一式の寄贈を受けて整備されたものです。「ここを訪れる人に、いち早く春を感じてほしい」——そんな思いが込められた贈り物が、今もこうして私たちを迎えてくれています。
誰かが心を込めて贈り、誰かが丁寧に守り続けてくれているからこそ、私たちは安心して花の美しさや物語に癒やされることができる。そんな「人の温かな気配」が静かに伝わってくる場所が、私はとても好きです。
日常のざわめきから少し離れ、花と向き合い、千年前の物語に触れる時間をここは静かに与えてくれます。次は満開の時期にも来てみたい—そう思いながら、ゆっくりと梅園をあとにしました。
🌸 熊本市動植物園|基本情報

| 正式名称 | 熊本市動植物園 |
| 梅の見頃 | 例年2月上旬〜3月上旬ごろ(年により異なります) |
| 見どころ | 石庭式梅園のほか、桜・菜の花・コスモスなど四季の花々、動物展示 |
| 公式サイト | 熊本市動植物園 公式ホームページ |
| @kumamotocityzoo(開花状況も随時更新) | |
| 入園料優遇 | 福岡市・北九州市・鹿児島市・熊本市在住の65歳以上の方は入園料無料 (運転免許証・健康保険証など、年齢・住所が確認できる証明書の持参が必要) |
※ 開花状況・営業情報・イベントは変更になる場合があります。お出かけ前に公式サイトでご確認ください。

